法人税の基礎知識 - Phoenix Accounting Singapore Pte Ltd

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ビジネスガイド

法人税の基礎知識

※本ガイドは主要な事項をわかりやすく記載しており、一部の事項を省略するなどしています。適用にあたってはより詳細な法律等の理解が必要ですので、別途ご相談ください。

 

最終更新日:2024年12月5日

法人税率はどれくらいですか?

シンガポールの法人税率は17であり世界でも低い税率の国の一つといえます。また、後述する軽減税率を加味すると実効税率はさらに低くなり、その他の特別措置も頻繁に行われているため税負担は日本と比較すると著しく軽くなります。

どのような軽減税率がありますか?

部分軽減税率 (Partial Tax Exemption Scheme for Companies)

全ての法人に適用される軽減税率。通常の法人課税所得のうち最初の10,000シンガポールドルの75%および、次の190,000シンガポールドルの50%が免税となります。

新規創業軽減税率 (Tax Exemption Scheme for New Start-Up Companies)

新規創業会社で、株主の全てが個人で20名以下、かつ10%以上の株式を持つ株主が最低1名いるなど、一定条件を満たす場合、設立から3年間、通常の課税所得のうち最初の100,000シンガポールドルの75%及び、次の100,000シンガポールドルの50%が免税となります。ただし、投資持株会社および不動産開発会社は、本制度の適用除外とされています。

その他の軽減税率等

その他、支払法人税額に一定割合をかけた税額控除が課税年度ごとに設定されることがあります。当該取り扱いの有無や金額は年度ごとに異なり、YA2024においては、40,000ドルを上限に税額控除が設定されています。

それぞれ、課税所得がSGD 200,000の場合に部分軽減税率、新規創業軽減税率を適用した場合の税額負担率は以下の通りです。

 

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欠損金は繰越しできますか?

シンガポールの繰越欠損金は無期限に繰越が可能です。
ただし、Capital  Allowanceと同様、株主同一要件があります。株主の過半数が変更になった場合は、その変更前の欠損金は利用できなくなります。一方主要な事業の継続要件は繰越欠損金の利用についてはありません。

 

キャピタル・ゲインについての取り扱いはどのようなものでしょうか?

シンガポールでは事業所得でないキャピタル・ゲインには課税されません
キャピタル・ゲインとは、株式や不動産などの売却益などですが、キャピタル・ゲインを生み出すような取引が頻繁に行われている場合、資産の保有期間が短い場合などは、事業所得であると見なされて課税される可能性があるため注意を要します。一方で、キャピタル・ロス(売却損)や、それらに関連する費用についても資本性の費用として損金になりません。

なお、株式売買については、時限的措置として2027年12月31日までに発生した普通株式の譲渡について、売却した企業が売却する株式の20%を売却時までの24ヵ月間以上継続して保有していた場合、キャピタル・ゲインとみなされ非課税となります。この時限措置は過去に期限の延長が繰り返し行われていますので、2028年以降も継続される可能性があります。

 

減価償却の取り扱いはどのようなものですか?                 

会計上の減価償却は税務上損金不算入となります。ただし、投資奨励の政策的配慮から、資本的支出の一部について、一定年数にわたりCapital Allowanceという形式で所得控除が認められています。これらは建物及び構築物については大きく控除の制限がある等、全ての固定資産に対して償却の効果があるわけではありません。

なお、固定資産売却を行った場合、売価が税務上の簿価(取得価格からCapital Allowanceを差し引いた額)を上回る場合、過去Capital Allowanceで控除した部分は課税の対象となります。

未使用のCapital Allowanceは繰越が可能です。ただし、株主同一要件があり、株主の過半数が変更になった場合は、その変更前の未使用のCapital Allowanceは利用できなくなります。また、主要な事業が変更になった場合も利用ができなくなります。

 

費用の損金算入についてどのような特徴がありますか?

シンガポールでは、業務に関係した費用及び所得を得るために必要とされた費用は基本的にすべて損金として計上可能です。
日本の税制と比較した場合の主な留意点は以下の通りです。
 -乗用車に関連する費用は損金とならない。タクシーなどの公共交通機関は可。
 -潜在的顧客への接待費用を含め事業に関連する交際費は全額損金可。税務調査に備え同席した相手の氏名、相手との関係、場所などは控えておくことは必要。
 -利息費用については課税対象となる収益を生み出している投資等の資金についてのみ損金算入可。
 -減価償却は損金不算入。前述の減価償却に関する項目に詳細記載

 -資本性費用は損金不算入。資本性費用とは、固定資産の取得など長期的な利益が期待できる事業への投資にかかる費用。

 -事業開始前の開業準備費用は損金不算入。ただし事業開始とみなされる日の1年前以降に発生した収益に対応する費用は損金算入可能。

 

居住法人・非居住法人の区分判断とその影響はどのようなものですか?

シンガポール国内で経営及び管理される法人はシンガポールの居住法人となります。居住法人は新会社に対する免税措置、国外源泉所得に対する免税措置、租税条約に基づく源泉税の減免、外国税額控除など税制優遇を享受できます。
一方、非居住法人はこれらの優遇措置を享受できません。居住法人・非居住法人の判断は、法人の全体的な経営上の意思決定(Control and management)がシンガポールでなされているかどうかでなされます。この判断では重要な意思決定を伴う取締役会がシンガポールの実地にて行われているかなども検討ポイントの一つとなっています。また、一定の条件を満たさない外資系の純粋な投資持株会社も非居住法人とされます。

 

国外源泉所得はどのように取り扱われますか?

特定の外国源泉所得の免税

シンガポールは属地主義(Territorial System)を採用しており、国内源泉所得、並びに国外源泉所得についてはシンガポールへ送金等された場合にのみ、課税されます。なお、居住法人が受け取る送金のうち、以下の場合は免税となります。

国外で課税の対象となっている以下のもの(その国の最高法人税率が15%以上)
 1.配当金
 2.国外支店の利益
 3.サービス収入(プロフェッショナル業務、コンサルタント業務など)

外国税額控除

シンガポールに送金された国外源泉所得について、上述の免税の対象とならない所得についても、二重課税の軽減措置として外国税額控除が設定されています。この控除も居住法人のみに認められます。控除額は、納付された外国税と、費用差引後の所得に対してシンガポールで納めるはずであった金額の低い方が適用されます。

当該控除税額の計算は、源泉地ごと・国ごとになされるほか、一定の条件を満たす場合には外国税額控除プーリング制度により源泉地や国をまたいで一括して計算及び控除判定ができます。

 

移転価格税制(Transfer Pricing)はどのように適用されますか?

シンガポールでも関連当事者間取引に適正価格の取引と申告が求められており、売上高が1,000万シンガポールドルを超える場合、あるいは関連当事者間での取引金額が税務当局の定めるしきい値を超える法人は、移転価格文書を作成し、取引が市場価格に基づいていることを証明する必要があります。遵守しない場合には、課税所得の修正や罰金が課される可能性があります。

 

グループ合算税制 (Group Relief System)とはどのようなものですか?

シンガポール国内にグループ会社が複数ある場合、繰越欠損金、または繰越されるCapital Allowanceについてはグループ内の会社に移転が可能です。
移転するための要件は以下の通りになります。
 -75%以上の持分関係があること(直接・間接の保有、共通の会社による被所有)
 -シンガポール法人であること
 -事業年度末が同一であること
従って、グループ関係を構築する場合は、繰越欠損金の同一株主要件と、グループ合算税制を考慮しつつ持分関係を決定しておくことが重要となります。

 

税務調査はどのように行われますか?

シンガポールの特徴として、担当官による会社を訪問しての税務調査は少なく、多くはレターによる質問と回答のやり取りとなります。これらの税務調査の質問対応は会計事務所に委託される実務も多くみられます。頻度については企業の規模などによって異なりますが、調査がなされる場合に備え、信頼できる会計事務所からアドバイスを得ておくことが重要です。フェニックスでは調査のポイントの相談をはじめ、税務顧問、税務申告などをお引き受けしています。

 

法人税の申告・納付スケジュールはどのようなものでしょうか?

2024年12月31日が決算日のケースは、以下の通りです。確定申告は決算日が属する年の翌年の11月末が期限となります。当該期の申告は、2025賦課年度 / Year of Assessment 2025として取り扱われます。

・見積課税所得(ECI)の申告期限:決算日後3ヶ月以内の2025年3月31日

 ⇒ECI申告後に課税通知書が発行

 ⇒発行後1ヶ月以内に当該金額を納付

・法人税申告書(Form C)の申告期限:決算期末が属する年の翌年(2025年)の11月30日

 ⇒提出後数ヵ月後に賦課決定通知書の発行

 ⇒発行後1ヶ月以内に、予定納税額との差額を納付

なお、3月決算である2025年3月31日が決算日のケースは、法人税申告書(Form C)の申告期限は2026年11月30日となり、かなり期間が空くことになります。

 

まとめ:法人税で悩んだら

シンガポールの法人税制度に関する理解を深めることは、ビジネス戦略を効果的に立てるために重要です。フェニックスでは、個別の事業に応じて最適な税務スキームや、リスクを低減するための対応策を網羅的に検討し、具体的なアドバイスを提供いたします。最新の税制改正や効果的な戦略についてのご相談がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。専門のスタッフが親身になって対応いたします。